麻薬について

 佐藤大輔という作家がいて、皇国の守護者という小説がある。
 僕の友人はこれを読んでいて、度々、その続刊が遅い遅いと嘆いては苦しみ悶えている。その有様は正しく麻薬の禁断症状のそれであり、かつ供給はそれよりも酷いのかもしれなかった。

 その様子を、僕はしばしばからかったものだった。

 そんな彼は、ある時、僕の部屋に、現在まで刊行されている全巻を置いて行った。特に何も言わなかったが、僕も同じ患者にしようというその悪しき企みは見え透いていたので、部屋の片隅に祭ってそのまま忘れ去ることにした。


 以来、しばらくの月日が流れた。


 何がいけなかったのだろう?と考える。
 うん、やはりあの伊藤悠がいけない。僕は伊藤悠のファンなのだが、「面影丸」以外単行本が無く、やっと出たと思ったらそれが漫画版「皇国の守護者」だった、というのがいけない。そう、みんな伊藤悠が悪い、そう決まった。


 で、本日朝、1,2巻を携えて出社。既に手持ちの糧食は尽き、隣の部屋に備蓄されている3巻以降に手をつけるかどうかの重大な判断を迫られている。事態は非常に厳しいと言わざるを得ない。