機動戦士ガンダムSEED DESTINY 最終回を観る

 なんでこうなっちゃったのか?


 物語開始当初の見込みとしては、シン・アスカが主人公で。

 妹の悲劇からオーブに背を向け力を欲し
 ステラとの悲劇から戦争と戦争を起こすものを憎み
 そこを上手く議長に絡め取られて使われるものの、
 結局は議長の言う「最終決着」は未来を固定化し閉ざすもの、真に必要なのは悲劇を知り理解しつつ、それを二度と起こさないよう努力すること、それを理解し示す。

 まあ、そんな大枠だったのではないだろうか、と。


 ところが!


 この大枠=シリーズ構成を揺らがせてしまったのは、やはりアスランとキラの旧主人公コンビのキャラとしての「強さ」だろう。特にアスラン。彼を描くことに時間を割かれ、シンを立てるエピソードの挿入の手をこまねいているうちに、結局シンは最後まで主人公に返り咲くことなく、あのような様をさらすことになり。議長の前に現れるのはキラになってしまった。おっそらく、開始当初は彼で終わらせるはずじゃなかったと推測するよ。

 しかし。
 僕は思うのだけど、アスランやキラの人気が強かった、というより、シンの作り方・使い方を誤ったと僕は思う。
 そも人気が確定しているアスランに対して、当初はちょっと憧れ風の対応を見せながら、後は基本的に対立的態度。それも、子供の様な。ささいなことで鬼の首を取ったように喜べば、そこを大人として立つアスランに諭される。それを受け入れるでもなく、すねた様に。こんなガキを、どうして好きになれと言うのか。物語の中のヒーローとして立てられると言うのか。
 ある意味、彼が主人公に戻る、ヒーローとしての資格を得る最後のチャンスが「ステラ」だったろう。ところが、製作側が彼にその直後取らせた行動が「キラ撃墜」であり。それはストライクフリーダムを登場させなければならない、という諸般の都合にしろ、彼は人気キャラを斬っては後で見事仕返しされるという実にそんな役回りを演じるハメになってしまった。

 さて。
 シンが主人公の座を追われたことで、キラたちに主人公をやってもらわねばならなくなった。そのための修正に、製作の時間が食われたのでは?と見る。
 それがなんにつながったかと言うと、キラに近い者たちの葛藤の放棄、説明の放棄である。
 ディスティニィープランは遺伝子によってその人間のその後の人生をあらかじめ決定しよう、というプランであろうと「推測」できる。しかし、番組中ではついぞそれをはっきり説明していないのではないか。少なくとも、それが実行されたら〜と語るキラやラクスたちの言葉は説明になってない、と私は思う。もちろん多くのファンはアニメ誌その他で情報を得ているのだろうが、それはTVアニメという媒体内で完結しない、物語としてははなはだ不親切と感じる。
 議長がそれに傾倒した理由に、タリア艦長との過去のあれこれがある、はずだ。しかし、それもついぞイメージの断片以上の説明が語られることは無かった。ルナマリアメイリンの姉妹の葛藤も放置された。何故ムウは回収されてネオにされたのか。ファントムペイン3人組のキーワードはどうしてあんな言葉なのか。

 そして、シン・アスカである。彼は一応愛する女を再び手にかけるハメになり、それを自分で停めることもできずアスランに止めて貰い。そして彼女に膝枕されてただ涙を流すのである。
 彼の中で、いったい何がどう決着できたのだろうか。それをあのステラの「明日ね」だけで納得しろ、というのは、あまりに彼に酷ではないのか。
 一番かわいそうなのは、彼である。




#以上は、本日の最終回を観た上での私の感想ですが、これはこれを読むあなたの感想とは全く別個に存在するものです。もしあなたが今日の最終回を楽しんだなら、それは素晴らしいことであり、あなたとスタッフの勝利なのです。私はそれを否定しません。